昨日は,大阪大学と京都大学の
電力関係の専攻の学生に向けて行っている講義に
今回は特別に参加させていただいて,
関西電力の研究所の施設を訪問させていただいた.
関西電力が所有する
送電系統のシミュレータAPSAを用いて
学生たちが実習を行うのだ.
APSAというのは,実際の系統を使って
実験をすることが難しい電力会社において,
同じ挙動を示すように,スケールダウンして,
抵抗やインダクタンス,負荷,発電機などを,
モデル化して接続したものである.
スケールダウンといっても,
大きな試験室いっぱいにラックが並べられている.
これによって,新規に系統に接続する装置の
制御や,過去に発生した異常現象の解明などが
可能となるのだ.
最近では,これらをすべてデジタルで実現することも
可能となりつつあるけれど,
このシュミレータは20年以上前に製作されたもので,
その多くがアナログ回路で構成されている.
そのため,モデルの変更などは容易ではないだろうけれど,
システムとしては非常に速い応答が得られ,
デジタルにおける計算時間による遅れの影響などを
考慮しなくてもよい特長がある.
ただ,負荷などの結線を変更するための
リレー盤などの大きさと
一面に配置されたリレーの数の多さをみると,
その管理維持の大変さを考えてしまう.
学生たちは,APSAに実際に触れることによって,
ずいぶんと積極的に演習を行っていたようだ.
やはり教科書の字面を眺めているだけとは,
大きく違う.
教科書で学んだ電圧の不安定現象などが,
スケールダウンしているとはいえ,
目の前の系統で発生するのである.
自分の手を動かして作業をするたびに,頭を使う.
講義の座学とは,そのあたりが大きく違う.
学生たちにもこうした実習は
おおむね好評だとの話を聞いた.
私は,こうした実習ができる環境にある
両大学の学生をうらやましく思う.
またこのような素晴らしい装置を
教育のために提供していただける関西電力殿の
志に感謝したい.
教員たちは,APSAとは別に,
同研究所で研究が進められている
SiC素子,インバータについても説明を伺った.
ここでは,高電圧用途のバイポーラ素子として,
SiCのGTOの開発をされている.
GTOの開発をしているのは,
世界でも,Cree社と関西電力とで構成される
このグループだけとのこと.
SiCといえば,みな自動車用途に目が行っているが,
大容量電力変換器への適用にむけた
こうした地道な研究努力ができるのも,
関西電力という大きな会社の特質であろう.
その結果には大いに期待しております.
ということで,昨日の見学も
「百聞は一見に如かず」との思いを
あらためて強く感じさせた.
学生たちに必要な教育とは何かと考える場合に,
多くの示唆を含んでいる.
学生たちの頭を自主的に働かせる.
そんな講義がいつもできたらいいのにと思う.
なにか良いアイデアはないものか.
2008年10月21日火曜日
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