先に,グールドとカラヤンの共演した
ベートーベンのピアノ協奏曲3番の録音を紹介したけれど,
そのカップリング曲が,シベリウスの交響曲第5番である.
一昨日の夜,この曲を聴いていて
不意に交響曲と小説は同じなのだと感得した.
作者がそのとき何を表現したかったのか,
それを音で表したものが音楽であり,
文章で表したものが小説なのだ.
そんなことはもう普通に言われていて,
芸術としては当然のことなのだろうけれど,
それがようやく腑に落ちたというか,
小説と交響曲が私の中で同じレベルで
鑑賞できるようになったというか,
とにかく一段また認識が高次に進んだ気がする.
ステレオ録音でこの曲が聴きたくなって,
(グールドとの録音はモノラル)
別のカラヤン&BPOの録音(65年)によるCDを聴いてみた.
夜なのでスピーカーの音は絞らざるを得ないけれど,
それでも音と空間の広がりを感じた.
よくシベリウスの曲は北欧の自然を表している,
などと紹介されているけれど,
ひねくれものの私は,そんなのはシベリウスの
出身地がフィンランドであるという先入観によるものだと
これまで思っていた.
しかし,突如としてこの交響曲の魅力に目が開かれた
今の私にとっては,この曲から受ける印象は,
まさに透徹とした冬の夜空の広大さと
私たちを包み込む自然のあたたかさである.
結局のところ,そうなってしまった.
カラヤンのシベリウスの録音は,
比較的カラヤン色が少ないのではないだろうか.
聴いていて,自然と曲に集中していき,
鼻につくところがない.
聴いた後のすっきり感がたまらない.
カラヤンは,「シベリウスの曲を指揮するには
北欧の自然に触れなければならない」みたいなことを
言っていたと思うけれど,それを読んで
胡散臭さを感じていた私を少し反省.
ほんとうにそうなのかも.
そのときに交響曲と同じだと思った小説が,
レイモンド・カーヴァーの
「必要になったら電話をかけて」である.
先週の土曜日に読んだばかりなのだけれど,
またこの話は別の機会に.
とにかく,この日を境に曲の聴き方が
異なるようになってしまった.
今後,どの曲も感じ方が変わってしまったのだろうか.
そしてなぜ交響曲と小説は同じだと思ったのだろうか.
いつかゆっくり考えてみたい.
まぁ,しばらくはシベリウスの作品に
どっぷりと浸ってみたい.
2008年10月1日水曜日
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返信削除東北のチェロ弾きさんというのは...
返信削除大変ご無沙汰しております.シアトル以来でしょうか.
やはり演奏する側にとってもシベリウスの曲は,そのような印象なのですね(って,聴く方がそう感じているんだから,演奏者側がそうなのは当たり前?).
なんか突然目が開かれたんです,シベリウスに.
でも,昨日聴いたラジオで,誰もが一度はその洗礼をうけるものだ,などとDJが話しておりました.私の他にもいっぱいそんな人がいるんですね.なんか,納得.
これからもよろしくお願いいたします.
(知人に読まれるのは恥ずかしいですが)