数日前に作曲家の福田和禾子さんの訃報にふれる.
66歳と聞いて驚いた.
もちろん若くして亡くなったということにもだが,
"北風小僧の寒太郎"などが流行ったのはたぶん
30年位前だろうから,
それからずっと第一線で活躍されていた,
ということに驚いたのである.
福田さんの名前を認識したのは,
やはり息子が生れて後である.
子供のための童謡集などのCDや
"おかあさんといっしょ"のDVDをみると,
やたらにこの人の作曲した歌が多い.
"赤鬼と青鬼のタンゴ"や"バナナのおやこ",
"そうだったらいいのにな"など,
(恥ずかしながら)うちの子供たちと一緒に歌える
素晴らしい歌が彼女の作品である.
これらの作品に共通しているのは,
ついつい口ずさんでしまう,
わかりやすく,それでいて飽きない
素敵なメロディにあふれているところ.
こうした魅力を持つ彼女の作品は,
これからもずっと童謡の定番として,
歌い継がれていくのだろう.
それは間違いない.
(たぶん,私もおじいさんになっても
"そうだったらいいのにな"などを
孫と一緒に歌っているはずなのである)
一方で考えたのはラップという音楽である.
ラップは時代を超えていく力があるのだろうか.
本質的にメロディを持たないこうした楽曲が,
数十年後も多くの人々の生活を
彩ることができるのだろうか.
私はそれは難しいと思う.
ラップが音楽シーンに登場してきた頃,
時代を代表するメロディメーカのひとりである
ビリー・ジョエルはラップを
強く否定していたことを思い出す.
人々が口ずさめない歌は結局エヴァーグリーンに
ならないのである.
今朝ラジオで,あるラップ歌手(?)の曲を聴いた.
エルガーの"威風堂々"のメロディラインに合わせて,
メッセージ色の強い歌詞がリズムよく,韻を踏んで
歌われていた.
聴いていて悪くないと思ったけれど,
結局のところ,それは"威風堂々"の
魅力なのではないかと考えが至った.
バッハの"G線上のアリア"にのせられたラップもあったし,
そういえば,松任谷由美の"アニバーサリー"に
ラップをかぶせた曲も昨晩聴いたような気がする.
Run DMCの"Walk this way"だって,
Aerosmithの名曲があってこそである.
つまりラップは,
名曲の素晴らしい旋律の魅力なしでは,
時を越え,距離を越えていくような力を
持てないのではないかと思うのである.
でも,ラップは感動を呼ばないものだとは思わない.
その場にいる聴衆は,そのグルーブ感に酔っているし,
そのメッセージも強い.
だから私は,ラップは音楽というよりも
むしろPoetry Readingに近いのではないかと思っている.
通常のPoetryよりも,
もっとアクティブに朗読される詩(lyrics).
それがラップのような気がする.
日本のラップの先駆者である
(そのことはあまり知られていないけれど)
佐野元春も,そういえばPoetry Readingに
力を入れていることに気づく.
(彼は詩人だ)
ラップや詩の朗読は,
基本的には個人的,あるいは小人数のためのものであり,
そこがメロディの力を持ってして大衆に浸透していく
音楽との違いなのかもしれない.
そして同じ理由で,旋律に乏しい(クラシックの)現代音楽は
Popularityを得られないのだろう.
2008年10月9日木曜日
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