この夏休み,長野にひとり旅をした。朝に長岡を車で出発して,高速道路を使わずに長野市まで行く。所要時間はおよそ3時間。幸い天気は雨が少々,ほとんど曇りでドライブは快適だった。
長野ではまず善光寺に参拝した。海外の人も多かったけれど,東京や京都,高山ほどではない。長野駅から善光寺までの参道をゆっくりと歩き(とにかく暑かったけれど),道沿いの店々を覗きながら歩くのは楽しいものである。
善光寺で参拝した後(本堂内,山門内,資料館など入場料を支払えば参観できるけれど,人が多くて行かなかった),今回の長野におけるメインの目的,長野県立美術館に行く。
長野県立美術館はその建物が美しく,それだけで観る価値があり,すでに私も訪れていたのだけれど,今回は展示も観ようと思い,再度訪れたのである。
| 長野県立美術館(NAM) |
まず企画展を観た。「NAMコレクション2025 第Ⅱ期」という展示で,チケットを購入し案内されるままに会場に足を踏み入れたのだけれど,そこで言葉通り言葉を失うほど,本当に驚いた。なぜならばそこには,マルセル・デュシャンの「Fountain」が展示されていたからである。
| マルセル・デュシャンの"Fountain" |
Wikipediaで調べてみると,さすがにデュシャン自身が作ったものではなく,デュシャン研究家の人が作った複製品8点のうちのひとつらしい。 京都国立近代美術館所蔵となっている。
しかし,本当に驚いたなぁ。ただ,この作品の歴史的な意味を知っているからこそ感動したのであって,正直作品自体に心が震えるというものではなかった。やっぱり便器にサインをしただけのものである。現代美術ってやはりわからない。。。
その他,常設展では長野ゆかりの芸術家の作品が展示されていて,ゆっくりとした時間を過ごすことができた。
さて,この美術館は2館に分かれた建物構成になっていて,もう一つは「東山魁夷館」となっている。こちらの展示も観覧した。
東山魁夷といえばあの美しい青緑色の森林と白い馬のモチーフが印象的であるけれど,それは50代を越えた頃からの作風で会って,この展示では20代の若い頃の作品も展示されていた。ただ,正直にいうと若いころの作品にはあまり心を惹かれなかった。それよりもやはり森林や山にかかる雲などを描いた,年齢を経てからの作品が興味深く,特に唐招提寺の襖絵は彼が自然を見てどのように感じたのかが直接わかるような美しさと壮大さがあふれていて,観ているだけで私も自然に対峙しているような感覚になった。
また同じように印象的だったのは,彼が雑誌「新潮」で担当していた表紙の作品たちである。雑誌の表紙だけに簡素なモチーフの組み合わせで目を引くように構成される作品のデザイン性が素晴らしく(私が言うことではないが)風景画の画家だと思っていた東山魁夷の洒脱なセンスにあらためて感じ入った。
今回の長野県立美術館への訪問は,たいへんな驚きと面白さを感じることができる実りあるものであった。展示物を調べていったわけではなかっただけに,心から驚いた。こうした楽しみが地方の美術館巡りにはあって,ついつい旅行先で美術館には足を運んでしまう。
#旅の情報
長野市は道が狭く,渋滞ばかり。時間に余裕をもっていった方が良い。駐車場は長野駅東口から出て,10分くらい歩いた場所に安いところが多くあり,500円/日くらいで駐車できる。
長野駅から善光寺までは参道を通っておよそ30分くらい要する。
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