昨日は東京においてJT-60SAに関する会議に参加してきた.
JT-60とは日本が世界に誇る核融合試験装置である.
(正確には臨界プラズマ試験装置.
人類が作り出した最高温度5.2億度のギネスレコードも持っている)
現在JT-60として常伝導のコイルを用いている装置を,
超伝導化改造し,JT-60SAとして
100秒程度の高性能プラズマの
長時間の放電を実現しよう,というものである.
(ちなみにSAは,Super Advancedとのこと)
ITERという国際協力によって建設が進められている
核融合実験炉のサテライトマシンとして,
7年後くらいから実験を行おうとしている.
ITERの建設が完了するのは少なくとも10年後だから,
それに先行して実験を行い,
ITERの実験に資するのもこの装置の目的でもある.
だから,実はこの装置は半分はヨーロッパの出資によって
建設されるのである.
半分はITERのための試験(BA,Broad Approach)としての性格を持ち,
このBA分についてはヨーロッパと半々の取り分.
そして残り半分は,日本の国内装置としての性格をもち,
これについては日本が主導的に試験を行うことになっている.
昨日の会合では,ヨーロッパとの国際協力に関わる多くの課題も
報告されていたのだが,私がもっとも深刻に思ったのは
人材不足の問題である.
このJT-60SAは核融合分野の
人材育成といった役割も期待されている.
しかし,JT-60SA計画を主体的に行う
日本原子力開発機構(JAEA)は,現在
新たなパーマネントな職員をなかなか増やせない状況にある.
つまりは新人が少ないのである.
現状では,任期付きの研究員が頑張っている.
文科省は,任期付きの職を増やし研究員の流動性を狙ったのだけど,
なかなかそうはなっていない.
そうしたキャリアパスは現在も確立したとは言い難い.
結局,残念ながらそうした道を選ぶには相当の覚悟がいる.
そうした道に,現在の安定志向の学生が進むであろうか.
核融合分野には当然博士の研究員が必要とされている.
しかし,そうした先の見えない道に進むことを覚悟して,
博士課程に進む学生がどれだけいると思っているのだろうか.
JAEAは,人材を育ててほしいと大学にいうけれど,
博士号を取得しても5年程度しか雇われず,
その先どうなるかわからない,といわれて,
そんな道を学生たちに勧めることができるだろうか.
少なくとも私は消極的である.
しかし,このままいけば核融合分野の人材不足は
深刻な状況になるのは間違いない.
7年後,JT-60SAの装置ができたときに実験で活躍しようとする若手は
だれもいないということになるのではないか.
そして,ITERが完成したとき,日本は世界を主導できる人材を
擁しているのだろうか.
一体誰が日本を背負うのか?
昨日,私は非常に暗澹たる思いをもって帰宅の途に就いたのである.
やはり,JAEAがパーマネントに職員を確保してもらわなければ
どうにもならないのではないかと思う.
任期制というのは,学生たちに全然魅力的ではないのである.
核融合科学研究所もそれほど研究者を
将来のために確保してくれる状況にはないようだ.
う~ん,私は核融合を応援したいのだけれど,
どうすれば良いのか良い案が思い浮かばない.
全くもって問題なのである.
#私も大学の任期付き職員なのだけど...
2007年10月10日水曜日
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