2007年10月26日金曜日

変わらない教科書,うれしさの反面...

私の担当している「電気機器」の講義の時間の前に,
同じ教室で「プラズマ」に関する講義が行われている.
二つの講義を共通して取っている学生も多いので,
机の上に置かれたテキストを目にする機会があった.
(プラズマの講義が電気機器の講義の前にあるために,
電気機器の講義を受講する学生の数も多いような気がする.
有難いことである)

見覚えのある紺色の表紙.

「プラズマ物理入門」
Francis F. Chen (著), 内田 岱二郎 (翻訳)

という本だった.
私も所有している.
とはいえ最近はすっかり開いたこともないので,
ずっと本棚に眠ったままであるけれど.
私も昔少しプラズマを勉強していたこともあるのだ.
(実は学生時代プラズマ核融合の研究をしていた)

うれしくなって学生からテキストを借り,
手にとってペラペラページをめくると,
まず,ソフトカバーになっていることに驚いた.
私が所有している本はハードカバーで,
いかにも教科書という体裁なのに.

しかし,内容はほとんど変わっていないようである.
そこでふと気付いたのだけれど,
内容がほとんど変わっていないというのは素晴らしい.
これは物理の教科書だからであろう.

工学の教科書というのはそうもいかない.
もちろん基礎的なところは変わりようがないけれど,
応用部分においては,技術の進展を
常に反映していかなければならない.
したがって,つねに新しい記述が必要となる.

担当する電気機器などは,
もうその原理は100年以上も変わっていないが,
その応用技術はパワーエレクトロニクスの進展を反映して,
ずいぶんと高度に変化している.
その部分は,やはり改めていかなければならない.

私が電気機器を学んだ教科書は
宮入庄太先生の著されたものであり,
今でももちろん愛用しているが,
後半の半導体変換器部分については,
サイリスタの呼称をSCRとしてあることや,
PWM制御についてはほとんど触れられていないなど,
やはりちょっと古めかしさを感じてしまう.
(ちょっと専門的な用語が出てきてしまい,ごめんなさい)

こうした工学ではなく物理の教科書というのは
ずっと使えるというのだから,
気づいてみると,これは素晴らしいことなのかもしれない.

よく物理学出身の人は応用力があって,
現場でも重宝されると聞くが,
意外にこうしたことと関連しているのかもと思う.

工学であってもやはり理論には精通していなければならない.

#余談だが,最近のTV番組「ガリレオ」第1回放映分で,
主人公の大学准教授がプラズマについて板書している
シーンがあった.
何気なく見ていると,プラズマがプラズマである条件が
数式で書かれてあった.
(特性長がデバイ長よりも十分に大きい,とか
デバイ長で定義される球体積内には
十分に多数の粒子が存在するとか,などの条件)
見ていて,思わず「ふふん」とにやけてしまった.

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