2009年12月24日木曜日

「クリスマスの思い出」, T.カポーティ

クリスマス・イブである.
そんなこんなで,また仕事をしている.
昨年も,またその前もずっとこんな感じだった.

ふと思い出したのだけれど,20年ほど前,
私が博士課程の学生だった時も
同じように研究室でイブを過ごしていた.

当時修士2年だった後輩のK山君とふたりで,
実験室でMHD発電用のコンデンサバンク(720 kJ, 11 kV)の
充放電回路を組み立てていた.
さすがにいつもは夜でも学生たちが多く残っている研究室も
人気が少ないようだった.

架台に積まれた巨大なコンデンサの電極に
ケーブル(RG8U)をネジを締めて取り付けながら,
K山君と,

「こんなクリスマス,ずっと忘れないかもね」

などと話していたことを思い出す.
ラジオをつけて作業していたのだけれど,
なぜかクリスマスにクラプトンの「レイラ」が
スピーカから流れていて,ギターソロのパートで,
寂しさが10倍に感じられたのを今でもよく覚えている.

そして,今日.
変わらない生活だ...

クリスマスの思い出

というT. カポーティの小品を思い出す.
ディケンズの「クリスマス・キャロル」については
何度か書いているので,今日はこの作品を.

カポーティの少年時代の体験が色濃く反映されていると
いわれる作品.
おばあさんとケーキを作りながら過ごす,
ささやかな,本当に小さなそっとした幸せなクリスマス.
そして自分の成長とともに訪れるおばあさんとの別れ.
最後にいたるまでの淡々とした語り口には胸が痛くなる.
この子供時代の暖かく美しい思い出があるだけに,
おばあさんと離れて暮らす主人公の胸の内を
思わずにはいられない.
クリスマスが来るたびに,私も思い出して読みたくなる
佳品である.
このシーズン,誰にでもおすすめできる.

村上春樹訳で1冊にまとまったものもあるけれど,

ティファニーで朝食を」(新潮文庫,T.カポーティ,村上春樹訳)

にも収録されているので,お買い得かも.

#カポーティには,この姉妹編ともいえる
あるクリスマス
という小品がある.
これも村上春樹訳で出ています.


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