2008年9月30日火曜日

百聞は一見に如かず (伊瀬研見学ツアー)

昨日は研究室全員でバスに乗り,
ふたつの施設の見学に行った.
ひとつはJHFC(大阪ガス)の水素ステーション,
もうひとつは関西電力のSVGである.
研究室では毎年このように全員で,
施設の見学に出かけるのが恒例なのである.
(昨年は,京都の仮想マイクログリッドを見学に
一昨年は,大阪ガスのガス博物館に行った)

さて,まず見学させていただいたのが,
水素ステーション.
これは,現在のガソリン車の代わりに
将来燃料電池車や水素エンジン車が
走るようになったときに,
現在のガソリンスタンドの代わりとなるものである.
全国で現在12か所設置されているとの話だけれど,
このステーションは街中(大阪城の近く.府警の隣)に
建設されているところが特徴である.

各水素ステーションでは,異なる水素製造法
(あるいは運搬法)などが試されているとのことだが,
この水素ステーションは,ステーション内で
都市ガスから水素を製造している.
製造能力は1時間に30立方メートル(ノルマル).
ディスペンサと呼ばれるガソリンスタンドの注油機と
同様の機会を用いて,燃料電池車に注ガス(?)する.
昨日は,わざわざ大阪府所有の燃料電池車に
ガスを充填するところも見せていただいた.
ガスの注入口は,家庭用ガスの口とおなじで,
カチッと音がするまで差し込めばそれでOK.
あとは,スイッチを入れるだけで350気圧まで
圧力を高めて水素ガスを充填してくれる.
思いのほか,簡単である.
コストや規制をはじめとして,まだいろいろな問題が
あるのだけれど,技術的には実証レベルにあることを
実感した.

将来,水素燃料電池車が街中を多数走る前には,
(現在は60台程度しか全国で走っていないらしいけど)
こうした水素ステーションがあちらこちらに
建設されていなければならないのである.
そうした時期は,一体いつになるのだろうと思う.

続いて,バスで向かったのが,
尼崎近くにある関西電力の変電所.
ここには,世界最大級(80MVA),
最先端の半導体素子による
無効電力補償装置(SVG,STATCOM)がある.
無効電力やSVGの話はちょっと専門的になるので
ここでは割愛するけれど,
要は,電力系統の電圧が不安定になるのを
防いでくれるありがたい装置なのである.
従来,火力発電所が近傍にあって,
その役目を果たしていたのだけれど,
老朽化に伴い閉鎖されたために,
(環境問題等,古い発電所は大変だ)
この装置が導入されたのである.

すでに稼働して4年近く.
当時最先端の大容量半導体GCTを用いて,
3レベルのインバータを,
さらに3重に多重化している.
...オッと,少し専門的になってきたので,
装置の話はこれくらいに.

しかし,付近の住宅の皆さんは,
このような装置が近くにあるなんて
思いもしないのだろうなぁと思った.
私たちは,電力会社は電気を売っていること
ばかりを思うのだけれど,
実はその電気を安定に供給するために,
送電・配電線網をはじめとして,
こうした巨大な設備も管理しているのである.
縁の下の力持ちと言われるゆえんである.
日本の電気料金は高い,高いと言われるけれど,
おかげで設備や技術は,世界一流のものをもっている.
日本の電力の品質は世界最高レベルである.

今回の見学で,学生の皆さんも
初めて見るものも多く,いろいろなことを
感じていたようだ.
まさに百聞は一見に如かず.
教科書の文字ばかりでは理解できないことが,
この見学で実感できたと思う.

伊瀬先生がこうした見学会を継続している意味をあらためて思う.

2 件のコメント:

  1. いつも楽しく読ませていただいています。

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  2. どうも有難うございます.
    今後もよろしくお願いいたします.

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