長い月日も回数で考えると
ぐっと短く感じられるという話を
昨日書いた.
こう考えると,大学の講義などは
半年の開講期間ではあるけれど,
講義数で数えれば,たった14回でしかない.
(試験を含めれば15回)
私のような先生と半年間付き合うと思うと,
ゲンナリする学生もいると思うが,
回数で言えば14回.
なんとか我慢して講義に
出席してきて欲しいものである.
しかし,少ない講義回数においても,
強烈な印象を残す先生もいらっしゃる.
そう考えて,私がすぐに思い出すのは,
大学時代の江頭淳夫先生である.
江頭淳夫先生は,「江藤淳」という文芸評論家であり,
当時,東京工業大学で
「日本文学概論」(うろ覚え)という講義を担当されていた.
内容は,「雨月物語」などをテキストに,
日本文学の歴史と成り立ちなどに関する講義だった.
朗々と語られる解釈はとても素晴らしく,私などは
これをきっかけに初めて古典を
生々しい感触を持って読むことができるようになった.
加えて講義の合間の雑談がとてつもなく面白かった.
辛口の文芸評論家らしく,歯に衣着せぬ批評を
火を噴くようにして語られていた.
例えば,島崎藤村の「夜明け前」などは
全く時代考証がなっておらず,
あんなのは文学とはいえない,だとか,
当時連載されていた井上靖の「孔子」については,
井上もあんなのを書くようになってはおしまいだ,
みたいなことを平気でおっしゃっていた.
私は実は,先生が著名な文芸評論家であることを
講義を受けている頃は全く知らなかったので,
この先生は,恐れも知らぬ意見を言う人だと,
本当に驚いたものである.
江頭先生の講義は,こうしたエピソードもあってか,
先生のかくしゃくとした姿勢とともに
今でもときどき思い出す.
考えてみれば,江頭先生の講義も
14回に満たなかったに違いない.
それでも先生の講義は覚えている.
やはり大事なのは時間の長さではない.
それぞれの物事の濃密さが,
心に深く足跡を残すのだ.
2007年12月12日水曜日
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