2007年12月21日金曜日

先入観を越えて説明する

昨日は,魅力ある大学院教育イニシアチブ
先端通信エキスパート養成プログラムの
一環として行われたコミュニケーションスキルに関する
講習会に参加した.

都合によりすべてに参加することは
できなかったのだけれど,
最初の「説明力」を磨く演習には参加することができた.

演習課題は,配られた紙に書かれた複雑な図形を,
言葉だけでいかに正確に,限られた時間内で説明し,
他の人に描いてもらうか,というもの.
グループに分かれ,ゲーム形式で
何人の人が正確に図を描けていたかを得点として
競い合う.

参加している学生は工学系なので,
座標や幾何学的知識を駆使して,
説明に工夫をして説明していた.
思いのほか,複雑な図形も正確に
他人に伝えることができており,
驚いたほどである.

しかし,こうした説明を聴いていると,
まだまだ不十分であると感じた.
他人が描く姿をはっきりとイメージできていない.
自分が図形を描くとしたら,
形,位置や大きさ,色などを
どの順番で思う浮かべていくだろうか.
位置だけ先に説明されても,
何を描くかを知らされていなければ,
人間は何も思い浮かべることができない.
そこら辺が理解できているか,
イメージできているかが,
勝敗を決めていたように思う.

こうした説明において,
大きな障害の一つが先入観である.
(この点について講師であるI先生も
強調して教えておられた)
今回の演習であれば,
自分はすでに図形を見て知っている.
だから,自分にとって当り前のことについて
説明を省きやすくなってしまう.

もちろん,今回の演習だけに言えることではない.
人に説明するときは,
常にこうした先入観を排するような
工夫をしなければならない.

特に,学会や論文などによる発表では,
ついつい自分の中では自明であることを,
説明し忘れてしまう.
その結果,一番肝心なことが聴衆に,
あるいは読者に伝わっていない,という結果に
終わってしまうこともよく見受けられる.

自分にとっての常識が,
他の人にとっても自明であることとは
限らないのである.

私も昔国際学会で失敗したことがある.
ランク分けを丸,バツ,三角の記号で表したのだけれど,
後で,それぞれの記号はどういう意味だったのかと
尋ねられた.
丸が優れている,というのは,
世界のどの国でも通用する概念ではなかったのだ.
そのときは,このことを思い知って,
非常に落ち込んだものである.

ということで,今回の講習も
こうしたことに改めて気づく
良い機会となった.

参加した学生たちも何かを得てくれていたとしたらうれしい.

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