2008年3月24日月曜日

科学は魔法となりうるか

今日は,学部学生の卒業式である.
朝からどうもキャンパス内が浮き立っているのは,
そのせいか,と思う.

通勤時に,式が開かれる体育館の近くを通ったら,
吹田キャンパスでは珍しい
(いや,医学部,薬学部では珍しくない)
女子学生の着物姿を見かけて,
こうした行事もいいものだなぁと思った.

また並んで歩くご父母の方々と学生との顔を見比べて,
あぁ,やはり親子なのだなぁと実感する.
遺伝というのは,もっとも恐ろしい伝染病か(笑).

福岡の学会から帰ってきて,
少しは時間ができるかと思えば,
全くそんなことはなく,仕事が山積である.
いつになったら,一息つけるのか...

新聞で,アーサー・C・クラークの訃報を目にした.
私はSFファンというわけではないが,
彼の名前ぐらいはもちろん知っている.
このブログでも話題にした「2001年宇宙の旅」の原作者でもある.

私の記憶に残っている彼の言葉の一つに,
次のようなものがある.

"Any sufficiently advanced technology is
indistinguishable from magic. "


これは,クラークの三原則のうちの第3法則で,
(他に二原則あるらしい)
十分に進んだ科学技術は,魔法と区別がつかない,
というものである.

現代の技術もずいぶんとそのレベルに来ているのではないだろうか.
自動ドアなんて,知らない人がみたら魔法の扉にしか見えないだろう.

私たちが,ある技術が科学や工学の成果だと認識できるのは,
それに人工的なにおいを感じるからである.
なにか不自然なものを感じるからである.
もしもある科学技術が,極めて自然に存在し,
だれでも不自由なく使用できるようになったら,
それが科学技術だとは思えなくなるのではないだろうか.

義手や義足,人工的な耳や目でこうしたことが実現できたら,
どんなに素晴らしいことだろうかと思う.
装置のガジェットやギミックを意識しないで,
自由に使えるようになればいい.
科学技術が,自然の中に溶け込んでしまう時代,
そのとき,科学技術はやはり魔法と区別ができなくなるだろう.

工学部の卒業式は,午後からである.
何十年後かに,そうした魔法を実現する卒業生が
たぶん中にいるのだろう.
もちろん,私もそうしたものを目指していきたい.

アーサー・C・クラークは私たちに素敵な目標を残してくれた.

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