2008年3月31日月曜日

日本のコンソーシアムはいつできるのか

ヨーロッパの人も同じ考えをもつ研究者なのだ,と
初めてヨーロッパの研究所を訪れ,
彼らと話したときに,そう思ったことを思い出した.

今日は,グローバルCOEの一環として,
世界最大のパワー半導体メーカのひとつである
Infineon Technology社のProf. Dr. Lorenz氏を
招いて,セミナーを開いた.

Lorenz氏は,ドイツのInfineon社のSiデバイスの
開発状況,そしてSiCなど次世代の素子に関する講演を
行ってくれた.

今後は,デバイスサイドとアプリケーションサイドの
人間がともに協力して,開発をしていかなければならない,と
力説されていた.

確かに,SiC素子などのスイッチング特性は優れているが,
非常に扱いづらそうである.
特に寄生容量の問題などが大きい.
こうした技術的問題は,データシートからだけだと読み取りにくい.
デバイスサイドからの助言が重要となることだろう.
う~ん,頭が痛い.
しかし,それが課題だ.

その他,中国やインドとの付き合い方についても
非常に興味深い話をうかがうことができた.
ヨーロッパも日本同様に悩んでいる.

そして,Lorenz氏はヨーロッパで進められている,
そうした企業の協力関係,コンソーシアムについて
言及されていた.

日本でもたびたびその必要性が議論されているが,
なかなか先に進まない.
ヨーロッパでは,すでにSimensなどの重電メーカ,
BMWなどの自動車メーカ,
そして大学と政府などが協力して,
パワーエレクトロニクスの未来を議論しているのだという.

その話を聞いて,誰がそれを始めたのかと尋ねてみた.
誰かが呼びかけなければ始まらないと思ったからである.
それが実はLorenz氏自身なのだという.
彼が4年ほど前から,その必要性を重電メーカに説き始め,
なんとか複数の重電メーカをまず同じテーブルに着かせることに
成功したとのこと.
メーカたちは,同じテーブルについてからも,
最初はお互い手探りの状態だったらしい.
3~5年後の戦略についてはやはり話にくいらしい.
しかし,10年,20年の展望となると,話は別.
ずいぶんと良い議論が行われており,
大学も加わってかなり良い成果が得られているようだ.

重電メーカの次には,自動車メーカを口説いたのだという.
やはり彼らは互いに厳しい競争をしているので,
説得は大変だったという.
しかし,今ではBMW,フォルクスワーゲン,メルセデスなど,
主要なドイツの自動車メーカが同じテーブルについているというのである.

そして,メーカの次は大学.
大学は比較的ネットワーク化されているので,
参画を呼びかけやすかったらしい.

そして最後に政府.
政府は,こうしたコンソーシアムは素晴らしいと,
すぐに予算をつけてくれたそうである.

しかし,ここまで来るのに4年かかったと話されていた.
そして今,家電メーカへの参画を呼びかけているという.
彼らも熾烈な競争の中にいるので,
なかなか説得が難しいらしい.

しかし,Lorenz氏はその必要性・重要性を信じていたのだからこそ,
長い年月をかけてコンソーシアムの実現にこぎつけたのだ.

...この話を聞いて,思ったことは,
日本がこのままでは危ない,ということである.
多くの人が,このままではいけない,
産学の共同体が必要だ,と思っている.
それは,よく学会の席でも話に出る.
しかし,まだだれもその一歩を踏み出せていない.

日本では,誰が,そしていつ,
動き始めることになるのか.
残念ながら,私では役不足である...

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