ヨーロッパの人も同じ考えをもつ研究者なのだ,と
初めてヨーロッパの研究所を訪れ,
彼らと話したときに,そう思ったことを思い出した.
今日は,グローバルCOEの一環として,
世界最大のパワー半導体メーカのひとつである
Infineon Technology社のProf. Dr. Lorenz氏を
招いて,セミナーを開いた.
Lorenz氏は,ドイツのInfineon社のSiデバイスの
開発状況,そしてSiCなど次世代の素子に関する講演を
行ってくれた.
今後は,デバイスサイドとアプリケーションサイドの
人間がともに協力して,開発をしていかなければならない,と
力説されていた.
確かに,SiC素子などのスイッチング特性は優れているが,
非常に扱いづらそうである.
特に寄生容量の問題などが大きい.
こうした技術的問題は,データシートからだけだと読み取りにくい.
デバイスサイドからの助言が重要となることだろう.
う~ん,頭が痛い.
しかし,それが課題だ.
その他,中国やインドとの付き合い方についても
非常に興味深い話をうかがうことができた.
ヨーロッパも日本同様に悩んでいる.
そして,Lorenz氏はヨーロッパで進められている,
そうした企業の協力関係,コンソーシアムについて
言及されていた.
日本でもたびたびその必要性が議論されているが,
なかなか先に進まない.
ヨーロッパでは,すでにSimensなどの重電メーカ,
BMWなどの自動車メーカ,
そして大学と政府などが協力して,
パワーエレクトロニクスの未来を議論しているのだという.
その話を聞いて,誰がそれを始めたのかと尋ねてみた.
誰かが呼びかけなければ始まらないと思ったからである.
それが実はLorenz氏自身なのだという.
彼が4年ほど前から,その必要性を重電メーカに説き始め,
なんとか複数の重電メーカをまず同じテーブルに着かせることに
成功したとのこと.
メーカたちは,同じテーブルについてからも,
最初はお互い手探りの状態だったらしい.
3~5年後の戦略についてはやはり話にくいらしい.
しかし,10年,20年の展望となると,話は別.
ずいぶんと良い議論が行われており,
大学も加わってかなり良い成果が得られているようだ.
重電メーカの次には,自動車メーカを口説いたのだという.
やはり彼らは互いに厳しい競争をしているので,
説得は大変だったという.
しかし,今ではBMW,フォルクスワーゲン,メルセデスなど,
主要なドイツの自動車メーカが同じテーブルについているというのである.
そして,メーカの次は大学.
大学は比較的ネットワーク化されているので,
参画を呼びかけやすかったらしい.
そして最後に政府.
政府は,こうしたコンソーシアムは素晴らしいと,
すぐに予算をつけてくれたそうである.
しかし,ここまで来るのに4年かかったと話されていた.
そして今,家電メーカへの参画を呼びかけているという.
彼らも熾烈な競争の中にいるので,
なかなか説得が難しいらしい.
しかし,Lorenz氏はその必要性・重要性を信じていたのだからこそ,
長い年月をかけてコンソーシアムの実現にこぎつけたのだ.
...この話を聞いて,思ったことは,
日本がこのままでは危ない,ということである.
多くの人が,このままではいけない,
産学の共同体が必要だ,と思っている.
それは,よく学会の席でも話に出る.
しかし,まだだれもその一歩を踏み出せていない.
日本では,誰が,そしていつ,
動き始めることになるのか.
残念ながら,私では役不足である...
2008年3月31日月曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
アイアンマン2
「アイアンマン」を観た あとに 「アイアンマン2」(2010年) を観た。「アイアンマン」がヒット作となり,続編が作られた。だいたい続編というのは面白さがいくぶん減るのだけれど,この続編は1作目に負けないくらい面白かった。 敵役を演じるのがなんといってもミッキー・ロークなのであ...
-
本ブログのコメントに, (電力)供給過多になるとなぜ、発電機の回転数が上がるのか というご質問をいただいたので, それについての回答を少し. (すみません,コメントいただいていたのに 気づくのが遅れました) 発電機の回転数は,個々の発電ユニットで見れば, 発電...
-
私が担当している「電気機器」という講義においては,「磁気回路」,「 直流機 」,「 同期機 」,「 変圧器 」,「 誘導機 」を取り扱う.「磁気回路」は機器ではないので,残りの4つの電気機械について学生のみなさんは勉強することになる.さてここで,「直流機」,「同期機」,「誘導機」...
-
Googleをはじめとして, 検索ツールなしでは仕事ができない, というところまで現代の私たちは来てしまった. 特に研究分野においては, 過去の研究のサーベイ,現在の市場調査, 世界の装置のリストアップなど, もう検索ツールの便利さ無しでは, 考えられない状況である. こうした状...
0 件のコメント:
コメントを投稿