今朝,大学の正門の前に人だかりができていた.
今日は大学の入学式らしい.
教員なのに全然認識していなかった.
入学された皆様,おめでとうございます.
これからまた一生懸命,勉学にいそしんでください.
さて,昨日のLorenz氏の次世代のデバイスの話にもあったのだけれど,
世の中にあふれているインバータなどのパワーエレクトロニクス機器は,
高速なスイッチング(ONとOFF)を繰り返すことによって,
交流を直流に変えたり,直流を交流に変えたりしている.
そのスイッチングの周波数は,産業用の大容量のものであれば
使用してる半導体素子の損失を小さくするために,
数kHz以下となっている(1秒間に2000から3000回のON/OFFをする)
こうした周波数であると,磁気素子(コイル)などがそれに伴って
振動し,音を出すことになる.
だから家電製品では,人間の可聴域を超える周波数で動作するように
設計される.具体的には17kHzとか,18kHzとかである.
人間の耳はだいたい20kHz程度まで聞こえるとされていて,
それをもとにCDに収められる音は20kHzで切られている(フィルタリング).
このくらいの周波数になると,半導体素子のスイッチング損失と呼ばれる
損失が多く発生してしまい,効率が悪くなってしまうという問題がある.
SiCやGaNの次世代素子を使えば,
低損失で高速なスイッチングが可能となるので,
もっと高い周波数での動作で設計でき,こうした問題は解消されることが
期待されている.
しかし,人間の脳は聞こえていると認識しなくても,
音はちゃんと耳を通じて脳の中へと入ってきているらしい.
それが音質に影響していると言われている.
つややかなバイオリンの音や金属的な笛の音.
そうした豊かな音の響きは,どうも人間の可聴域とされていた
周波数以外の音によって下支えされているのではないか,
と考えられるようになった.
その結果,SACDでは100kHzの再生能力を持つと言われるまで,
音楽媒体の再生周波数帯が広がっている.
(実際には,もっと高いサンプリング周波数なのだけど)
しかし,それは一般の人の話である.
色覚についても,紫外領域の光が見える人がいるように,
20kHz以上の音も聞こえる人がいる.
最近気づいたのだけれど,私が
冷蔵庫や太陽光発電用インバータなどの
そばに行くと,やわらかな音がする.
ほんわかとまるで環境音楽のような印象である.
自宅の台所などに夜一人起きていると,
そうした音がかすかに聞こえていたのだけれど,
その音の発信源が,そうした家電製品であることに最近気づいた.
どうも私には20kHz程度の音がかすかに聞こえるらしい.
意外にそうした音は心地よい.
またインバータによっては,PWMなどの変調方式を
制御によってときどき変更しているらしく,
聞こえてくる音色も変わっていく.
こうした音は,ドアひとつ隔てるだけで
聞こえなくなるので,睡眠などには全然問題にならないのだけれど
(夜に問題になるのは,主に低周波の方である)
世の中で,こうした音色に耳を澄ませている人が
どれだけいるのだろうかと,夜中の台所のテーブルで
ひとり考えた.
聞こえないと思って設計している技術者は,
私のような一部の人たちのことなど考えていないに違いない.
彼らは知らず知らずのうちに,環境音楽を作り出しているのだ.
(一部の人にとってだけれど)
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