2008年5月7日水曜日

認識されていないパワーエレクトロニクス

5月2,3日に開かれた大学祭「いちょう祭」では,
見学者の数の少なさに,少しがっかりしていたのだけれど,
実はもっとがっかりしたことがあった.

それは,パワーエレクトロニクスという言葉を,
見学者の皆さんが知らなかったこと.
それも本学の1年生,電気系の学生のほとんどが
パワーエレクトロニクスが何なのか知らなかった.
一般の人ならばまだ許せるけど,
電気系の学生がこれでは本当に絶望的である.

金曜日であった5月2日は,
研究室公開に対するレポート提出が,
講義の課題となっていることもあり,
1年生の見学者が(比較的だけど)多く訪れた.

彼らは,この4月まで高校生だったわけで,
この知らないという事実は,高校生までの学生時代に,
パワーエレクトロニクスという言葉に
全然触れてこなかったということを示している.

インバータエアコンという単語を出してみても,
知っている人は1/3程度というところか.
インバータエアコンが発売された当初は,
インバータを売り物にしていたから,
宣伝にも単語が登場し,
一般の認識率は高かったのかもしれないけれど,
最近のエアコンはほとんどインバータタイプだから,
インバータが付いていることなど誰も気にせず,
認識率が低くなっているのかもしれない.

しかし,これだけ身の回りにパワーエレクトロニクスが
あふれているというのに,この認識率の低さは何だ!
小中高の学校では,先生は何を教えているのだろう?

科学雑誌は,超ひも理論とか,ナノチューブとか,
そんなことばかりをトピックスとして取り上げて,
パワーエレクトロニクスなどには見向きもしない.
果たしてそれで良いのだろうか?

もっとPopular Scienceなものを
取り上げるべきではないだろうか.
確かに,クォークも相対論も面白いけれど,
もっと身近な科学技術にも注目すべきではないだろうか.

ノートPCのACアダプタの話に至って,
ようやく電子回路の存在に思いが至るようである.
車もモータで走るというこの時代に,
こんなことではいけない.

せめて身の回りの家電,電車,自動車,電力系統などに
パワーエレクトロニクスが使われているのだという事実だけは
理系に限らず,一般の人たちに認識してほしいと切に願う.

パワーエレクトロニクスに携わる私たちの啓蒙努力が
足りないということなのだろう.
それでも学校の先生はもっと私たちの生活に密接した
科学技術について教えるべきではないだろうか.
学校の先生に対する講義が必要というのであれば,
よろこんで参上したいと思う.

世に一人でも多くの人に
パワーエレクトロニクスの重要性を知ってもらって
私たちの仕事も理解してもらいたい.

「パワーエレクトロニクスって言葉知っている?」

と尋ねて

「....(沈黙)」.

こんなやりとりはもう嫌なのである.

2 件のコメント:

  1. なるほど、大変憂慮すべき状態ですね。
    私が電機会社勤務であると聞いて、妻は(であった時)、家電は何でも直せると思ったようですが、そんな認識かもしれません。

    車の電動化が進んでいるのを見て、まさか模型用のブラシ付きモータが載っていると思っているんでしょうか?

    パワーエレクトロニクスというと、多岐にわたって、また、積み重ねで成り立っていて、ある特定の人にフォーカスできない、また、ある特定の技術にフォーカスできないからでしょうか。

    でも、あれもパワーエレクトロニクス、これも、それも、というつながりで理解するのも重要だと思います。

    そして、先生方とともに、企業人も、世間に知らしめて行く活動、していかなければなりませんね。

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  2. Asano様,そうなんですよ.大変憂慮すべき状況なのです.

    少なくとも高校生くらいにはパワーエレクトロニクスがなんたるかを知っておいてほしいものです.
    とはいえ,私も高校生時代にそうした言葉には疎かったように思いますので,大学だけでなく,企業,学会等で社会に宣伝する活動が必要なのだと思います.
    それが将来の技術者の確保にもつながるかと...

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