2008年5月2日金曜日

眠る音楽

今日,明日と大学は「いちょう祭」と呼ばれる大学祭である.
大学の研究室,施設などが一般公開されている.
近隣の方々,あるいは大阪大学・大学院に
入学を希望する大学生,高校生の皆さんは
ぜひ足をお運びください.
私も研究室で,説明をしているかもしれません...

さて,今朝のニュースで「いねむりクラシック」のような
コンサートが開かれたというものがあった.
聴衆にはアイマスクなどが用意され,
リラックスできる音楽が演奏されて,
いつのまにか眠りに入ることができるのだという.
なんとも贅沢な話である.

まぁ,チケットが2万数千円のウィーンフィルのコンサートで,
居眠りをしてきたというツワモノの話も聞いたことがあるので,
それはそれで,良いのかもしれない.

私も実はコンサート中に居眠りをしたことがある.
水戸芸術館で開かれた四重奏団の演奏.
ハイドンの「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」だったと思う.
不覚にも眠ってしまった.
確かにちょっと地味な曲なのだけれど,
それにしても恥ずかしい.
今聴くと大変興味深く聴けるのだけど...

不眠のための曲といえば,もっとも有名な曲の一つが
大バッハの「ゴルトベルク変奏曲」だろう.
バッハが教えていた14歳の少年ゴルトベルクが
不眠症に悩んでいたカイザーリンク伯爵のためにこの曲を
演奏したという逸話が残っている.

でもこの曲は,はっきりいって大曲で,
演奏会でもこの一曲限りということが多い.
32の変奏曲から構成され,聴きどころ満載である.
ピアニスト,チェンバリストにも高い技能が要求され,
腕の見せ所,聴かせどころという名曲である.
したがって,録音も多く,私も10枚以上は所有している.

なかでも,やはりグレン・グールドの新旧の録音2つは
秀逸であり,一年に何度も私のCDプレーヤに載せられている.
新しい方の録音は,旧い方に比べ非常にゆっくりとした
テンポで演奏されているので,
眠るのにちょうど良さそうなものだけれど,
実は途中の変奏からテンポも速く,快活に演奏されるので,
とても眠ることなどできない.
カイザーリンク伯爵の逸話もたぶん嘘だろうと思う.

実はこの新しい方の録音は,私が初めて購入したバッハである.
学生時代,「ゲーデル・エッシャー・バッハ」という本を読んで,
バッハの音楽とはどういうものかと聴きたくなって,
CDショップに足を運んだ.
そのときに,けだるそうな姿勢でジャケットに写っている
オジサンの姿に心惹かれてたまたま購入したのである.
まぁ,それがグールドであったわけだけど.

とにかく,そのCDは私を魅了して,
しばらくずっと聴きこんでいた.
クラシックのピアノ曲なんて全然興味がなかったのに.

以来,面白そうな「ゴルトベルク」の録音をみると
ついつい購入してしまう.
そして,その演奏者の解釈を聴く.
同じ曲だけれど,演奏者が違えば,
印象がずいぶんと変わり,
全然飽きない.

どれが良い演奏かなどはよくわからないけれど,
やはり私は,この曲を聴きながら
眠りに落ちることなどできないのである.
最後まで聴かずに寝るなんて,もったいない.

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