パワーエレクトロニクス学会の見学会と
定例研究会である.
7月31日(金)は見学会で,
中国電力 島根原子力発電所を訪問.
見学会参加者30名程度で,
バスに乗って到着.
幸いにして天気は曇りと晴れであり,
雨天の中の見学という事態だけは
避けることができた.
島根原子力発電所は,現在3号機が建設中で,
7月中旬に圧力容器が搬入・据え付けされたばかり.
その貴重な建設段階の原発を見学させて
いただくことができた.
なにはともあれ,建屋の周りに集まった
大型クレーンの迫力に感動する.
十数台はあるのだろうか.
なかでも世界でも最大級のクローラクレーン
(定格荷重930トン,ブーム長さ100m以上.
世界に3台しかないらしい)には,
そのキャタピラとブームの大きさに興奮してしまった.
3号機はABWRと呼ばれる改良沸騰水型原子炉で,
定格出力は137万3千kW,
まさに最新鋭の発電設備である.
H16から準備工事(地盤改質など)が始まり,
現在が建屋建設の佳境となっていて,
H23が営業運転開始の予定となっている.
現在,日本には53基の原子力発電所が稼働していて,
3基が建設中とのこと.
他の2基はほとんど建設が終了していて,
実際に建屋の建設は,国内では
この島根原発3号機だけとのことである.
この機会は非常に貴重なものであり,
ご尽力いただいた中国電力の方々には
心より感謝したいと思う.
次に向かったのは,
新出雲風力発電施設.
こちらは今年4月に操業が始まったばかりの,
総容量7万8千kWの国内最大級の
ウィンドファームである.
島根県の出雲市北,十六島(うっぷるい,と読む)町に
位置しており,ずいぶんと市内から遠かった.
風車は3MW定格(国内最大級!)のものが
全部で26基,東西に分散して配置されている.
これがとにかく広い敷地であり,
1号機の場所から11号機のところまでバスで
向かったのだけれど,それだけで15分を要するという,
大変な道のりであった.
(細い道を運転していただいた,松江市交通局の
大型バスの運転手さんには深く感謝)
風車はロータの直径が90m,ブレード数3,
タワーの高さが75mという巨大なもので(Vestas社製),
世界最大の大型旅客機エアバス社のA380の
翼幅が80mというから,それよりも大きい.
定格回転速度は16.1 rpmだから,
ジャンボジェット機が75mの高さで,
1分間に16回もグルグル回っている状況を
想像すると,ちょっと怖い感じもする.
実際,真下から風車を見上げると,
ブンブンという音もあって大変な迫力である.
こんなものを26基もこの山の中に運んで
建設したのだから,その苦労たるや
たいへんなものであったろうと思う.
発電方式は,二重給電型の誘導発電機方式で
(俗にいうDFIG),1機あたり3000kWの定格出力である.
ナセルの中で,1000Vの発電機出力を
変圧器によって22000Vに変換してから
タワーの中を通って,連系線に接続される.
重たい変圧器をタワー上部に設置することが
ちょっと不思議に思えたのだけれど,
タワー上部で昇圧されることにより,
タワー内の配線を細くでき,
風車のヨー制御(風向によって風車の向きを変える)に
貢献できるのだという(太い配線はねじりにくい).
当日は,タワーの内部まで入らせていただいて,
ローカルの制御盤も見せていただくことができ,
大変に興味深かった.
しかし,原子力発電所からの移動に思いのほか
時間をとられて,ゆっくりと見学することができなかったのが
くれぐれも残念であった.
(時間の見積もりが甘かった,庶務幹事である私の
責任です.申し訳ありませんでした)
当日は,パワーエレクトロニクス学会会長である
伊瀬先生より,「今日の見学は,
もっとも安定な電源の代表である原子力発電と,
不安定な電源の代表である風力発電を,
一緒に見学できます」とのお話があり,
未来の発電所のあり方を考えるのに,
大変貴重な機会であったと思う.
当日,ご尽力いただきました皆様に
心より御礼申し上げます.
本当に、素晴らしい見学会でしたね。企画して、運営して、お世話していただいた庶務幹事さんにも感謝です。
返信削除「不安定な電源」とはまさにその通りで、風任せですからね。それだけに、蓄電技術が同時に発展するんだと思います。パワエレ技術以外にも、材料技術やその他いろんな技術が伴ってくると思います。
今は発展途上ではありますが、いろんな技術の発展とあいまって、「安定した電源」に昇華していくんだと思います。
不安定だからだめだ、決めつけず、そんな目で見ていきたいものですね。
Asanoさん,どうも有難うございました.皆様に良い見学会であったと思っていただけると本当にうれしいです.
返信削除Asanoさんがおっしゃるとおり,不安定供給の問題を解決するのが技術なのだと思います.その技術に私たちは関わっているわけですので,私たちの責任であるともいえます.
私たちも地球環境のために頑張っていきたいものですね.