2017年4月13日木曜日

上野の花見には気分がのらない

今週末はめっきり春らしくなって気温が上がるというから,桜を楽しむのはこの土日がピークなのだろう.近くに花見に散歩でもしようかと思う.

梶井基次郎は「桜の樹の下には屍体が埋まっている」という文章を書いて,その妖しい美しさの理由を看破したのだけれど,私はある時期本気でその話を信じていた.

大学生になって東京に出てきて,花見といえばやっぱり上野公園が有名だった.でも私はその上野の桜の樹の下には死体が埋まっているという都市伝説を信じていて,満開の桜の下で大騒ぎしている人たちの気がしれなかった.

なぜなら上野といえば,戊辰戦争で上野戦争と呼ばれる彰義隊の激闘があった場所で,たいへん多くの死者が出たけれど,その死体は引き取ることが明治政府によって許されずしばらく野ざらしになっていたという話がある.その死体が上野公園に埋められて,その上に桜を植えたのだと信じていたのだ(実際は引き取られてこっそりと供養されたらしい).

私は梶井基次郎の文章とこの都市伝説をすっかり信じて,上野の桜をみると複雑な気持ちになっていた.今は桜を見ても死体が埋まっているなどとは思わないけれど,上野公園を訪れると上野戦争の凄惨さに思いをはせることがある.単に人ゴミが嫌いなだけではなく,こうした理由で上野には花見にはなかなか行く気にはならないのである.

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