2019年4月1日月曜日

AIを用いたリバースエンジニアリング

とにかく世の中はAI(人工知能)ブームである.たしかにAIはこれからの未来において大活躍することは間違いない.人間社会にも大きな影響を与えるだろう.ただ猫も杓子もとびつくというのはいかがなものかと思ってしまうのも実感である.

しかし,先日もAIを利用して昔の白黒写真に色をつけてカラー写真のようにするという技術が紹介されているのをテレビでみた.何千枚もの写真をつかって学習させたのだという.白黒写真というのは本来カラー写真に比べ,情報が不足しているのである.その足りない情報を推測して補ってしまうというところがすごい.たとえばこれを画像のモザイク外しなどに応用してみるとする.画像でモザイクがかかっていても,その中身を推定されてしまうのであれば,プライバシーの保護などずいぶん怪しくなってくる.音声についても同様で,「音声は変えてあります」などと表示されても本来の声を推測されてしまうのである.その上,AIによって推定された情報が正しいとも限らない.どこまで本物に近いのかを評価することは難しい.しかし,人はそのAIが推測した画像を本物だと信じてしまい,誤った判断を下す危険性もあるのである.

欠落している情報を入手できる情報から推定するということができるのであれば,これをリバースエンジニアリングで使用しようとする試みもすでになされている.たとえば,パワーエレクトロニクス分野のPWMインバータ.これは直流の電気を交流に変換し,その出力波形を正弦波に近づけようとするものだけれど,正弦波に近づくのは50Hzあるいは60Hzの周波数が中心で,PWM波形にはそれよりもずっと高い周波数成分が含まれている.この高い周波数成分はLow Pass Filterによって通常はカットされてしまうのだけれど,完全に除去されるのではなくわずかながら出力波形に含まれてしまう.これらの含まれ方は回路方式や制御方式によって特徴をもつから,これらを検出し,AIで推測させると,PWMの手法の推定だけでなく,内部の回路構成,スナバの定数までもわかってしまうというのである.この技術を用いれば,回路を密閉してわからないようにしても非破壊で内部を推測できてしまうのであるから,主要な技術が容易に盗まれてしまうのである.

このようにAIによる推測というのは,本来隠すべき部分でさえ明らかにしてしまう恐れがある技術なのである.こうした技術が確立されてしまうと世界が大きく変わってしまう可能性さえある.

>>> つづきは明日に

*PWM...Pulse Width Modulation

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