今朝,運転中にNHK-FMから流れてきたのは,
ベートーベン作曲交響曲第5番だった.
第3楽章の途中から聴いたのだけれど,
ついつい演奏に引き込まれてしまう.
演奏自体は,どうも昔のマエストロ風の仰々しいもので,
私としては好きなものではなかったけれど,
曲自体の魅力に惹かれて,
じっと耳を澄ましてしまう.
最近読んだ「ベートーベンの交響曲」
(金聖響+玉木正之,講談社現代新書)にも
書いてあったのだけれど,
この曲はそれ自体の完成度が非常に高く,
指揮者の技量がある程度あれば,
どんな風に振っても曲を聴かせることができる,
そんな作品なのだと私も思う.
いろいろな演奏を録音で聞くけれど
(録音になっている時点で,
ある程度のレベルは保証されているわけだけど)
どの演奏を聴いていても,それなりに集中してしまう.
もちろん,演奏の好き嫌いはあるけれど,
それなりの感動が味わえてしまう.
そんな稀有な曲が,この交響曲5番なのである.
石に例えるならば,ダイアモンド.
(これも誰か言っていたっけ...)
ギュッと詰まった内容は,
その硬度が最も高いと言われるダイアモンドを
イメージする.
曲のどの部分を聴いても,
密度の濃さを感じてしまうのだ.
昔,若きバーンスタインが白黒の映像で,
この5番をピアノを弾きながら解説しているものを
観たことがある.
(たぶん,"Young people's concert"だと思う)
ベートーベンは,何度も何度もこの曲を書きなおしている.
その稿を追ってバーンスタインはピアノで主題を弾きながら
解説していく.
以前の稿では,曲が走っていかない.
主題が立ち止っているような印象を与える.
そして次の稿.
少し進んでいくような気がする.
こうして何度も何度も推敲を重ねているうちに,
現在の寸分の狂いのない,まさに精密大型機械のような
曲が完成したのである.
そのことをバーンスタインは力説していた.
この話は,よくモーツァルトの伝説と比べられる.
だがベートーベンという人間が努力を積み重ねて
この大作を完成したということ自体に感動する.
ベートーベンは天才には違いないけれど,
モーツァルトとは異なる天才である.
努力の果ての勝利という第5番の主題そのものが
ベートーベンの人生なのだな,と
あらためて思う.
(こんな話,誰もが何度もしているのだろうけど)
今朝の演奏はティーレマンのものだった.
大げさな感じがして,私は好まない.
でも,逆にお気に入りの録音といわれても,
すぐには思い当たらない.
まぁ,強いてあげるとすると,
カルロス・クライバーか,
カラヤンの60年代の録音あたりかな.
2008年2月12日火曜日
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