2008年6月27日金曜日

日本の核融合研究の誇りをもって

本日は,日本原子力研究開発機構(JAEA)の
"JT-60SA専門部会"に出席するため,
またまた東京に出張.
今週は3日不在だった.
ギリシャから帰国して少し落ち着かない.
(ブログは頑張って更新しています)

さて,JT-60SAというのは,
世界に誇る日本の核融合試験装置の
フラッグシップマシンJT-60の
後継試験装置である.

これまで稼働してきたJT-60は,
核融合の性能指標である核融合積においても
核融合炉を目指した高効率運転においても,
世界でトップクラスの性能を出し続けている.
燃料であるプラズマを加熱して達成した温度5.2億度は,
人類が作りだした最高温度として
ギネスブックに載っているほどの
日本が世界に誇る核融合試験装置なのである.
(そのわりに知名度が低いのが悲しい)

このJT-60が常伝導マシン
(すなわち銅のコイルを使用)
であったものを,
JT-60SAは,超伝導マシン
(-269度付近に液体ヘリウムで冷やすと
抵抗がゼロになる超伝導導体を用いた
コイルを使用)
に改造するものである.
これをSuper Advancedとして
SAと呼称することになっている.

これはITERの
幅広いアプローチ(Broad Approach)の一環として
行われるので,EU(ヨーロッパ)と
連携して設計・製作が進められる.

本日の会議の報告を聞いていると,
やはりこうした国際協力のプロジェクトの
難しさがあって,
EUとの意見の調整に時間がかかるようである.
仕様変更を繰り返し,
ぎりぎりのところで設計が成立するように
努力されている.
本当に少ない人数でEUとやりあっている
JAEAの皆さんの努力には本当に頭が下がる.
彼らのハードワークは,
日本の核融合に誇りを持つことによって
支えられているのだと実感した.
お身体にお気をつけて頑張ってください.

こうした現場では,有能な人材を求めているようだ.
この日本の核融合の誇りを継承してくれる
若い人をさがしている.
電気分野でも,機械分野でも.
経験があればいい.
もしも,自分がやってやろうという人がいたら,
手を挙げてほしい.

JT-60SAは,すでに部分的に材料等の調達が始まっている.
7年後には運転開始の予定である.
本日も委員の方が言っていたけれど,
10年後,20年後の日本の核融合研究を
背負うマシンなのである.
未来の研究者のために,
この装置はつくられなければならない.
今,この装置に携わっている方々は,
その責任を感じている.
このプロジェクトは必ず成功させなければならない.

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