2008年7月29日火曜日

雷のときに頼もしいヤツ

昨日の昼から夕方にかけては,
近畿地方は大変な雷雨であった.
ところどころで被害もでている.

この吹田キャンパスでも
空が真っ暗になったと思ったら,
急にバケツで水をまいているような
横なぐりの雨が降り始めた.
最近雨が少ないと思っていたけれど,
降る時がこんな降り方では本当に困る.

雷の方も活発に鳴っていた.
私のPCはデスクトップなので,
途中電源を切っていたくらいである.
(ノートPCならばバッテリがあるので,
多少のことがあっても大丈夫なのだが)

さて,雷が鳴ると何が困るのか,
ということなのだけれど,
まずは落雷被害である.
昨日も被害に遭われた方がいらっしゃるようだが,
電気機器としても大変に困る.
高電圧のサージと呼ばれる波が瞬間的に発生して,
機器を壊してしまうことがある.
だが,頻度的には少ない.

一方で被害として大変多いのが,落雷による
瞬時電圧低下(瞬低)である.
これは,電力系統のどこかに雷が落ちた時などに,
事故を検出して系統の保護機器が働くことによって
発生する.
一瞬その問題の箇所を電気的に切り離して,
(常時接続しているスイッチを切り離す)
異常回復後に,系統をスイッチを入れて
再接続するのである.
このときに,系統の電圧が短時間低下することがある.

100Vの電圧が0Vになってしばらく続けば,
それは停電だけれど,
瞬低は,たとえば70V程度まで電圧が低下して,
そしてすぐに100Vに復帰するような現象なのである.
10%以上電圧が低下すると瞬低と呼ばれる.
時間にしてもかなり短くて
0.5秒もすれば電圧が回復することが多い.

まばたき程度の時間だけの話なので,
だから私たちも
「あれ,ちょっと蛍光灯が一瞬暗くなったかな」
くらいにしか思わない.

しかし,これが半導体工場などで発生すると,
大変な被害を引き起こす.
別に機器が壊れるわけではないけど,
異常を探知した電気機器(たとえばサーボモータなど)が
止まってしまうのである.
その時に生産していた製品の品質には問題が生じ,
大規模な工場では,その被害額が一回で数千万円に上るという.
たったまばたき一回程度「チカっ」と暗くなっただけでである.

全国で年間に発生する瞬低の回数は数百回を越えるだろう.
これは雷が送配電線に落ちるかぎり,
なくすことはできない.
そして,そのたびにどこかで損失が発生しているのである.

では,どのように対策しているのか.
実は,瞬低対策装置という
パワーエレクトロニクス機器を
設置して被害を防いでいるのである.
動作原理は至極簡単.
装置は電気をためる貯蔵装置と
そこから電気を取り出す回路から成り立っている.

通常時には電気をためておいて,
瞬低が起こったら,それを検出して,
回路を通して足りない電圧分(電力分)を
瞬低対策装置が補ってやるのである.

基本的に長い時間,電力を補うものを
無停電電源(UPS)と呼び,
短時間を補償するものを瞬低対策装置と
呼んでいるようである.
日本では停電よりも瞬低の頻度がずっと多い.
UPSに比べ瞬低対策装置は,
短時間の補償ですむので,
電力貯蔵装置が小さくて済む.
だから工場などの機器に対して
一括して設置されることが多い.

装置はそれなりに高価だけれど,
半導体工場などでの被害を考えれば
安い投資である.

でも役割はやっぱり地味.
縁の下の力持ちだなぁ,と思わざるを得ない.
そんなところでパワエレ機器は
こっそり働いているのである.

昨日も何度か瞬低があった.
そのたびに,どこかで瞬低対策装置が
動作しているのである.
雷がなるたびに,
そうしたパワエレ機器のことを
少し思い出していただけるとうれしいなぁ.

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