テーマは「核融合」.
私が「核融合」を?といわれても仕方がない.
しかし,6年前までは核融合研究の周辺にいたのだから,
そこは大目に見てもらおう.
核融合は,私が学生の頃も夢の発電だったけれど,
現在もまだ夢のままである.
しかし,学生の頃にまだ概念設計段階だった
国際熱核融合炉ITERは,すでにフランス
カダラッシュの建設中である.
ちゃんと研究は進展しているのだ.
口の悪い研究者は,核融合研究は,
新幹線に翼をつけて飛べと言っているようなものだ,
などといっているが,核融合炉の性能指標である
核融合三重積(温度,密度,閉じ込め時間)で見れば,
2年でトランジスタ集積率が倍になるという
ムーアの法則と同じ速度で進展してきている.
半導体集積回路の輝かしい進展と同じなのである.
(まぁ,この比較をしたからといって,
どうなるわけではないのだけれど)
核融合の講義をして救われる気持がするのは,
学生たちの興味がいまだに失われていないことである.
学生たちも核融合の話を聞きたがっている.
このことを実感できるだけで嬉しくなってしまう.
核融合はいまだ魅力的な研究分野であり続けているのである.
午前中の講義を終えて,そのまま東京霞が関ビルへ向かう.
超電導エネルギー貯蔵研究会に参加するためである.
超電導エネルギー貯蔵は,極低温に冷却すると
抵抗がゼロになるという性質の物質を使ってコイルを作り,
そこに電流を流すことによって,磁気エネルギー(=1/2 L I^2)の形で
電力を貯蔵しようというものである.
通称SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage,
スメスと発音)研究会とよばれるこの会は,
1986年の超電導フィーバーの頃にその歴史をさかのぼる.
それまで,4.2K(-269℃)まで冷却してやっと
超電導状態が得られた物質しか見つかっていなかったけれど,
77K(-196℃)程度でも超電導状態になるという物質が
発見されたのである.
私はたぶん大学1年生だったと思うけれど,
その頃の大騒ぎは良く覚えている.
これからは電力はロスなく送れる,
世界は変わるのかなと思ったものである.
あれから20年以上が過ぎた.
SMESはすでに実用化されてはいるのだけれど,
普及はあまりしていない.
世界も変わっていない.
超電導材の価格と冷却装置までを含めたランニングコストが
ネックとなっている.
しかし,高温超電導線材がもっと安価に量産できるようになれば,
ぐっとその用途は広がるだろう.
それはすぐ近い将来のことと期待している.
(ちなみに,ヱヴァンゲリオン・序というアニメ映画にも
SMESは登場していた.ただし,スメスではなく,
「エス・エム・イー・エス」と呼ばれていたけれど.
どこで出てくるのか,興味のある人は探してみてください)
年に1回のこのSMES研究発表会における今年の招待講演が,
核融合科学研究所前所長の本島先生による
核融合の講演だった.
大変興味深いご講演で,その内容については,
また機会をあらためて記事としたい.
金曜日は,超電導と核融合の話題に
あふれた一日だった.
SMES研究会の懇親会では
懐かしい先生,先輩方にいろいろお会いして,
少しお酒を飲みすぎてしまった.
これら二つの分野の話が
やっぱり私も好きらしい.
0 件のコメント:
コメントを投稿