空手を始めた頃,スーパースターの一人だった,
フルコンタクト空手(当時はマーシャルアーツと
呼ばれていたけれど,
まぁ,キックボクシングだったかな)の選手で,
華麗な後ろ飛び回し蹴り(ローリングソバット)が
印象的だった.
その高速に繰り出される技から,
"The JET"ユキーデとか「怪鳥」とか
呼ばれていた強い選手だった.
彼はジャッキー・チェンの映画にも出演していて,
「スパルタンX」(だったかな)では,
非常に素晴らしいアクションシーンを披露している.
(空手道部の同期のM君が,それに感化されて,
道場でその真似ばかりをしていた)
彼は,このように俳優もやっていたけれど,
本当に技術的にも優れた選手と評判だった.
私も少し憧れていた.
まぁ,彼のトレードマークの赤いパンタロンを
履こうとは思わなかったけれど.
彼は「実戦フルコンタクトカラテ」という技術書も
著していて,当時立ち読みだけれど私も
目を通したりしていた.
確かこの本だったと思うのだけれど,
彼はこんな風に書いていた.
”コップに半分の水が入っている.
そこで「半分しか入っていない」と考えるか,
「半分も入っている」と考えるか,
そうしたところから戦いは始まるのだ"
(詳細,全く忘れてしまっています...)
すなわち,ポジティブに思考することの重要性を
述べている.
コップの話も,ポジティブシンキングの話も
現在では当たり前に聞かれるようになったけれど,
1980年代前半で,戦いの場でこうしたことの
重要性をはっきりと述べているのは大変珍しかった.
(私の稽古している心身統一合氣道では,
もっと前からこうした教えがあったようだけれど)
しかし,格闘技の世界だからこそ,
心理状態が自分のパフォーマンスに
大きく影響するということを,
ユキーデは身をもって実感していたに
違いないのである.
現在流行している安易なポジティブシンキングとは
その重みが全く違う.
できると思ってやることが大切なのである.
やる前から,失敗することを心配していれば,
本来の能力を発揮できない.
ポジティブに状況をとらえて,
その中で最大のパフォーマンスを発揮する.
これがいつでもどこでもできなければ,
戦いに勝利することはできないのである.
できると思って始める.
その前に十分に廟算しなければならないが,
始めるからには,必ずできると信じて実行する.
失敗のことは,失敗してから考えればよい.
このように私ももう20年以上教えを受けてきたのだけれど,
まだまだ未熟なことを日々実感している.
今日,ふと,できると思って行うことの重要さを考えて,
ベニー・ユキーデを思い出したのである.
(自分でもどういう思考パターンなのかとあきれるけれど)
彼は今何をしているのだろうか?
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